――上海の事務所を現地法人に格上げする

 2、3カ月以内に、食品の輸出入や中国現地での販売を手がける貿易会社に改める予定で、準備を急いでいる。オーストラリアの牛肉、フランスのチーズやワインなど高級食材を中国にも持ち込み、商圏を広げていく。

――経済発展で中国人の味覚も変わりつつある

 中国の食事は豚肉が中心だが、近年、牛肉への関心が高まっている。オーストラリアやニュージーランドで生産した日本向けの牛肉を北京でも販売したところ、非常に反応が良い。現地の牛肉の3―4倍の価格にも関わらず、大変売れている。

 和牛にも注目が集まっている。すでに現地では「和牛=高品質」というイメージが定着している。現時点ではBSE(牛海綿状脳症)の問題で日本の生肉を中国に輸出することはできないが、将来的には取り組みたい課題だ。

――主力であるハム・ソーセージについては本格的に現地生産を始めた

 食肉加工メーカー大手の江蘇雨潤(ユールン)食品産業集団と北京に合弁会社を設立し、今年10月に営業許可を取得したばかり。まずは「伊 藤ハム」ブランドの商品を月10トンペースで生産している。工場の生産能力は月100トン。来年春には月40トンまで生産量を増やしたい。

――現地生産のハム・ソーセージは、中国人の味覚にマッチするのか。

 中国の一般家庭において、日本人が食べているチルド(=凍結しない氷結点の温度帯で保存し、味や風味を守っている)のハム・ソーセージ は、なじみが薄い。物流網の整備の遅れからか、市販品はレトルト(=密封し高温殺菌したもの)が多く、どうしても味や品質で見劣りしてしまう。

 ただ、富裕層を中心に、食生活において品質にこだわる「本物志向」が浸透し始めている。伊藤ハムの商品は一般的なものと比べると1.5倍の値づけとなっているが、イトーヨーカ堂など日系スーパー中心に人気を集めている。

上海のデパート内に出店している伊藤ハムのテナント
――販路も急速に広げる

 現在は日系スーパー、約100店舗で販売している。地元スーパーにも協力を仰ぎ、北京だけで200店舗の商品棚にハム・ソーセージを並べたい。

 ここ数カ月間、テストマーケティングの一環として上海の高級店にもテナント出店しているが、非常に好評で固定客もついた。上海地域の営業が認められれば一気に販路を拡大できると思う。

――現地生産のハム・ソーセージは今後、日本に輸出するのか

 ぜひ実現したい。中国から輸出するには、中国と日本の両政府の認可が必要。最近、ハードルが高くなってきたが、1年以内に中国政府の許可を得るべく努力している。中国を世界に向けた生産基地にできるかどうかが、中国ビジネス成功の鍵を握る重要なポイントとなる。

――日本の中元・歳暮のような法人需要はあるか

 大切な顧客に高級ギフトを贈るという習慣は日本以上のものがある。日本で扱っているようなハム・ソーセージのギフトセットを試しに販売したところ、非常に高い値段設定にもかかわらず好評だった。

――中国でも今後、「食の安全」への意識が高まる

 日本やオーストラリアの生産・加工拠点では、牛の耳にタグを付けるなど最新のトレーサビリティー(生産履歴の追跡)体制を整えている。このノウハウを中国にも取り入れることで、安心・安全のブランド力を高めたい。

 現在中国ではこういったシステムをまだ実現できていないが、中国政府も力を入れており、海外への輸出拠点という位置づけを考えても必ず取り組まねばならないと考えている。

――携帯電話を使った情報提供も検討中とか

 日本では商品のパッケージに2次元バーコードを印刷し、携帯電話で読み取ると生産履歴やレシピなど商品の関連情報を表示するシステムを提 供している。中国の都市部では日本より携帯電話が普及しているので、むしろ日本よりもこういったサービスが受け入れられやすいのではと考えている。パッ ケージに2次元バーコードを印刷することで、先進性、安全性への取り組みをアピールできるという効果もある。

(聞き手は村尾龍雄・弁護士法人キャスト糸賀代表)


http://www.nikkei.co.jp/china/interview/20051206cd8c6000_06.html
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