新島俊光
上海三陽時装商貿有限公司総経理
 三陽商会は2006年5月に上海市に現地法人上海三陽時装商貿有限公司を設立し、同年12月に直営店をオープンした。直営店オープンから約1年。中国での事業展開について上海三陽時装商貿有限公司の新島俊光・総経理に聞いた。

――現地法人上海三陽時装商貿有限公司の事業内容は

 中国市場における服飾品の販売、輸出入業務が主な業務で、現在は主に中国大陸での小売り、卸売りなどを行っています。三陽商会は香港と台湾でも販売を行っていますが、香港は三陽商会香港駐在員事務所、台湾は三陽商会の海外営業が担当しています。

 現在は直営店1店舗と百貨店3店舗の計4店舗を展開し、婦人服ブランドの「FRAGILE(フラジール)」と「Johanna ho(ジョアンナ・ホー)」の2ブランドを扱っています。直営店は上海市、百貨店は上海市の梅龍鎮伊勢丹と四川省成都市の成都伊勢丹、9月には江蘇省常州 市の地場百貨店、常州購物中心に出店しました。

 現地法人は三陽商会の子会社になりますので、商品は日本の三陽商会から買って、中国で販売することになります。中国で作っている商品も一 度日本に持って行き、逆輸入しているという形です。現在のところは「フラジール」と「ジョアンナ・ホー」の2ブランドを日本と同じように拡販していくのが 使命となります。

常州購物中心に9月に出店した「フラジール」の店頭 常州購物中心に9月に出店した「フラジール」の店内

――婦人服ブランドの「フラジール」と「ジョアンナ・ホー」の2ブランドに決めた理由は

 「フラジール」と「ジョアンナ・ホー」はともに25~35歳の働く女性をターゲットにしたブランドです。日本と同じく、中国でも男性より女性の方が消費意欲は高いため、婦人服のブランドを投入しています。

 また、「フラジール」はブランドのテイストが中国の人にも向いているのではないかという点と日本市場でもそれなりの規模がありますので商 品を動かしやすいという点があげられます。上海で開催された「ジャパンファッションフェア」へ出展し、評判がよかったということもあります。「ジョアン ナ・ホー」は香港で生まれ、英国のセントラル・セントマーティンズ大学で学んだデザイナーのブランドです。香港出身のデザイナーが手がけるブランドという ことで可能性があるのではないかとみています。

――直営店オープンから約1年となります

「SANYO新天地旗艦店」の外観

 2006年12月に上海市に直営店「SANYO新天地旗艦店」をオープンしました。直営店では「フラジール」と「ジョアンナ・ホー」の2 ブランドのウエアと雑貨を展開しています。接客方法など店舗展開のベースは日本と同じです。例えば、本社の指示により週1回ディスプレーを変えるといった ことをしています。店舗の内装は単独で出店する場合は、「ブランドは基本的なイメージはどこでも同じにするべき」と考えていますので、日本と同じにしてい ます。しかし、直営店はテイストの異なる2ブランドを同じ店舗で扱うため、ワールドスタンダード的なものを採用しました。セレクトショップのようなイメー ジです。価格設定は物流費や関税、17%の増値税などがかかるため日本の1.3~1.4倍になっています。

 場所は上海の繁華街「新天地」に隣接する「華府天地」です。中国ではまだ「三陽商会、フラジール、ジョアンナ・ホー」という社名やブラン ド名はあまり知られていません。そこで、出張や旅行で頻繁に海外へ行っている人たちが集まるエリアが有力ではないかと考えました。例えば出張や旅行で日本 に行ったことがある人ならば「三陽商会」や「フラジール」を知っている可能性が高い。実際に日本で「フラジール」を知りファンになった中国の方が上海の直 営店に来ているということもあります。

――ブランドの知名度をあげるための取り組みは

「SANYO新天地旗艦店」の店内

 雑誌への掲載やダイレクトメールを出すといった日本と同じオペレーションをし、「フラジールの三陽商会」、「ジョアンナ・ホーの三陽商 会」をアピールしています。10月には人通りの多い場所を借りてファッションショーといったイベントも行いました。販促活動においても、まず日本でしてき たことを1回行い、その反響を検証しています。日本と同じやり方をしてダメだったら修正するという方法です。

 実際、日本と同じことをしても反響は違います。例えば雑誌は日本ほど影響力がなく、現段階では販促の効果があるとはいえません。雑誌に対 する価値観が日本とは異なると感じています。しかし、日本の方法がまったくダメということではなく、いまは効果がないことでも今後、日本のやり方が通用す る可能性もでてくるのではないかとみています。

――商品の売れ筋は日本と同じでしょうか

「SANYO新天地旗艦店」のディスプレー

 日本で売れている商品が、必ずしも中国でも売れるわけではありません。気候や体形が異なり、商品に対する価値観や趣味も違うと感じていま す。例えば日本は冷暖房が効いている場所が多いこともあり、冬でも季節感がない薄手の服でも売れます。中国では寒いときは厚着をしますので気候にあった服 を提供していく必要があります。また地域差も大きい。現在、出店している4店舗はほぼ同じような気候ですが、例えば10月に10度を下回ることもある北京 に出店しようと思ったら10月にはダウンコートを持って行かなければいけません。

 好みの色についても例えば、上海で黒っぽい服を着ている人たちが固まっていれば日本の人たちということが多い。上海の人たちはもう少しカ ラフルな服を着ているという印象です。服の選び方でも違いを感じています。働いている女性が会社にスーツやテーラードのジャケットを着ていくかというと必 ずしもそうではない。花柄の派手なワンピースを着ていく人もいるし、周囲もそういった服装を気にしていない。日本のように会社用の服、オフの時の服という ようにTPOを踏まえて服を選ぶ人は少数派だと感じています。

――今後の展開は

「フラジール」を着用したスタッフ

 中国のマーケットは日本だけでなく中国系、韓国系、シンガポール系、欧米系など、すべてある中での競争になります。私たちはブランドビジネスなので、ブランドというものをしっかり持ちながら、差別化し価値観を上げていくことが生き残る秘訣ではないかと考えています。

 また、同時に地域差による商品、別注のようなものも必要だと考えています。今後は「フラジール」や「ジョアンナ・ホー」のテイストは崩さ ず、ブランドの範囲の中で中国にあったアレンジを加えたオリジナル企画の展開も行っていく予定です。また、紳士服ブランドの投入や百貨店への出店なども検 討しています。

 「まずは日本と同じことをしてみよう」と考え、販促活動や接客方法など日本の方法をベースに展開し、最適な方法を日々検証しながら修正し てきました。例えば最初は日本と同じサイズ展開だったけれども、2シーズン目からワンサイズアップしたものを投入したり、日本よりもカラフルな服を多くし たりと変えてきています。当然、日本のやり方がすべてではないので、今後も常に検証し最適な方法に修正していきます。いかにはやく修正できるかどうかが重 要だと考えています。

(聞き手はNIKKEI NET 山田明美)



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