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  中国の旅行業界がインターネットで大きく変わりつつある。宿泊予約サイトの楽天トラベル(東京・港)は2003年、「旅の窓口」を運営するマイトリップ・ ネットを楽天が買収して事業を統合し、国内最大手に浮上。中国にも宿泊施設のネット即時予約という新たなビジネスモデルを普及させた。現在2000近くの 中国のホテルを検索対象とし、反日デモが吹き荒れた2005年も売上高を2倍に伸ばしている。中国では「旅之窓」の名称でサービスを展開する楽天トラベル の佐々木弘顕上海事務所長は「日本への中国人旅行客向けサービスも拡充する」と意気込む。(聞き手は村尾龍雄・弁護士法人キャスト糸賀代表)

――中国でインターネット宿泊予約サービスが伸びている

 日本人旅行者向けに、中国の約2000のホテルをインターネット上で紹介している。日本の宿泊予約サイトと同じく、ホテルの担当者に部屋 数や料金を直接入力してもらう形式とし、2003年にサービスを始めた。日本から毎日200人乗りのチャーター便1機分相当の客をホテルに仲介している。 昨年は反日デモの影響を受けたにもかかわらず売上高は前年比2倍に増えた。2006年も同様の伸びを見込んでいる。

――旅行代理店との機能の違いは

 中国にはさまざまなオンライン宿泊予約のサービスがある。そのほとんどは、あらかじめホテルから一定数の部屋を買い上げて販売したり、顧 客から予約を受けて仲介業者が部屋を確保したりする伝統的な「リクエストベース」のもの。電話やネットによるコールセンターを活用し、部屋の空きがなけれ ばホテルに空き状況を確認するなどの手間をかけている。 当社はユーザーがネットを介してホテルを即時予約できるようにした。一番の違いはコストだ。コー ルセンターにかかる人件費や回線料が不要なので、ホテルからいただく手数料が低く設定できる。通常は10%以上、高いところは30%近いところもあるが、 当社は8%だ。

中国語の予約サイト
  中国のホテルは海外客向けに高い料金を設定している「2重料金」が多く見られるが、「旅之窓」には通常価格を適用してもらっている。中国では新しくて割安 なホテルが次々に建設されており、日本の大手旅行代理店が紹介できていない物件も多数取り込んでいる。価格と情報量の両面で競争力が高い。

――中国人ユーザーも開拓する

 当初のユーザーは日本人だけだったが、現在は台湾、香港を含む中華圏の顧客が2割を占める。中国のホテルに加え、中国人旅行客を呼び込みたい日本のホテルを約1700そろえて中国人向けに紹介している。中国向けの日本のホテルの取り扱い規模としては最大級だ。

 中国人の会員は2万人を超えたが、利用者はまだ月間200人ぐらい。このうち台湾、香港の利用者が6―7割だ。渡航ビザの自由化などが進めばさらに利用者拡大が見込めるだろう。

――中国でネット決済の仕組みを取り入れる

 中国でも昨年あたりからクレジットカードの利用者が急速に増えてきた。ネット上でも決済サービスが普及し始めている。旅之窓でも10月から、中国人向けサービスにネット上の決済サービスを取り入れる予定だ。

――中国人向けサイトでの工夫は

 日本人は検索機能などを使って自分が欲しい情報にたどり着くのが当たり前だが、中国人にはトップ画面にすべて情報が見える形で並べた方が 効果的だ。中国の検索エンジンで上位表示されるような対策も含めて中国人ユーザーの特性に合った情報提供を模索している。仕事などで個人でもビザを持って いる日系企業の従業員などを対象に、人材派遣会社とタイアップするなどの形でPRした。その後口コミで評判が広がっている。

 日本への関心を高めてもらうため、近々サイト上で「日本へ行こう!」といったキャンペーンも始める。日本酒の楽しみ方や地下鉄の乗り方、花見情報、中国語表記の日本地図などのコンテンツを独自にそろえて、日本の魅力を伝えていく。

――ホテルの協力を得るのに苦労した

 料金などをホテルの担当者が入力するという仕組みが中国で初めてで、従来型との違いを理解してもらうまでに時間がかかった。30都市以上で説明会を開いた。

  中国語で入力すると自動的に日本語に変換するシステムを取り入れた。ホテルの担当者が参照する管理画面にも日本のソフトとは違う工夫を取り入れた。「当該 エリア全体で日本からの旅行客が何人いて、自分のホテルが集客できているのは何人か」「集客できていないとすれば違いは何か」などを分析できるようにし た。

 ホテルに対しては、収益力を高めるためのきめ細かいアドバイスを行っている。エレベーターの隣の部屋は料金を下げるとか、眺めの良い部屋は逆に料金を高く設定するなどのノウハウを伝えていった。

 サービスを立ち上げた2003年はSARS(重症急性呼吸器症候群)やイラク戦争の影響で中国のホテルも苦境にあった。日本人旅行客を呼 ぶ販売チャネルとしてネットの活用を提案して歩いた結果、日本からの直行便が飛ぶ都市を中心に、初年度600のホテルが参加してくれた。いまでは登録済み の2000社のうち8割が常時部屋を提供してくれている。

(聞き手は村尾龍雄・弁護士法人キャスト糸賀代表)


<取材を終えて>

上海のオフィスには「楽天」と
「旅之窓」のロゴが並列表記
  「宿泊予約サイト利用が7割」――。日本経済新聞社が3月に国内で実施した旅行に関するアンケート調査では、宿泊予約サイトの普及を示すこんな結果が出 た。ネットを使った予約サービスはもはや旅行に欠かせないものになっている。もともと電話での予約が定着している中国でもネット利用が急速に普及すること は間違いないだろう。

 「旅の窓口」は1996年に日立造船子会社のネット事業として誕生した、宿泊予約サイトのパイオニア。実店舗を持たずコストを下げ、既存の大手旅行会社のビジネスモデルに見直しを迫るものとして業界に大きなインパクトを与えた。

 その「旅の窓口」を買収したのが楽天だ。買収の際「中国事業の足がかり」と報じられるなど、中国での宿泊予約サイトは様々な分野での海外展開を狙う楽天にとって中核的意味合いを持つ。

  2004年には楽天が中国の宿泊予約サイト大手のシートリップ・ドット・コム・インターナショナルにも出資。旅之窓との相乗効果を狙う。日本と違い、中国 では集客力のある楽天本体のEC(電子商取引)事業やポータル事業といった「援軍」がないなか、大手旅行会社や米ネット企業など中国でのライバルを突き放 す次なる一手に注目が集まる。

(NIKKEI NET 重森泰平)



http://www.nikkei.co.jp/china/interview/20060703cd973000_03.html
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