――日本の漫画は中国でも人気だ

 日中合作の漫画雑誌を中国で創刊したい。2007年が目標だ。中国人漫画家を起用する。創り手でもキャラクターでも中国人が前に出てこないと、中国人読者を引き付けられない。

 中国で漫画家を育てていく。中国発の作品だけではなく、講談社が日本の漫画誌に載せている漫画も転載する方針だ。

 日本では「少年マガジン」「モーニング」「なかよし」などの漫画誌を手がけている。「モーニング」では台湾の漫画家を起用した実績がある。

――中国でアニメ市場が広がっている

 中国でのアニメ共同制作も2007年に実現したい。中国では外国製アニメの放映規制が厳しくなった。中国の人材や資本を使ったアニメでないと売り出しにくい。

 中国企業と組んでアニメを作る仕組みが有望だろう。講談社が日本で培ったノウハウを生かせる。テレビ番組を通じて作品が浸透していけば、キャラクタービジネスが広がる。中国で生まれたアニメを海外に輸出する道も開ける。

――女性ファッション誌が売れている

 既に3誌を発刊済みで、第4、5の女性誌投入を控えている。これまでは中国本土の出版社や編集プロダクションと組んできたが、この先は台湾や香港の出版社との提携もありえる。女性誌向けの広告市場が広がっており、新たなビジネスモデルを探っているところだ。

 女性向けの月刊ファッション誌「Style(スタイル)」を4月に創刊した。講談社が中国語版を出す女性誌としては「ViVi(ヴィ ヴィ)」「with(ウィズ)」に続いて3誌目だ。「ヴィヴィ」「ウィズ」は中国系出版社と提携して創刊したが、「スタイル」は現地の編集プロダクション と組んだ。

 日本で講談社が既に出版している雑誌や書籍の中国語版を出す形の版権ビジネスが中国での収益の柱だ。来年度の売り上げは1億円近くになる と見込んでいる。「ヴィヴィ」の発行部数は公称で40万部に達する。販売部数に比例したロイヤルティーと、広告収入の一部を受け取っている。

 「ELLE(エル)」や「COSMOPOLITAN(コスモポリタン)」など、欧米の出版社が出す女性誌もひしめいており、競争は激しい。日本発の女性誌は読み物が受けている。記事の盗用事件が起きたほどだ。

――電子出版事業にも乗り出す

 漫画キャラクターの待ち受け画像を、携帯電話に配信するサービスを年内に始める。日本発の漫画をそのまま持ち込むことには、規制が厳しくなりつつあるが、待ち受け画像は規制の対象とならないようだ。

――現地法人が9月27日、北京で営業を始めた

 出版にかかる資金の一部を負担する代わりに、実際に売れた場合の利益を分けてもらう「合作出版」を手がける。翻訳だけを請け負うケースや、製作から販売まで大がかりに引き受けるパターンなど、様々なビジネスモデルを想定している。

 従来は外資系企業への規制にしばられて、比較的シンプルな版権ビジネスにとどまっていた。現在もまだ規制は残っている。しかし、今後、さらに開放が進むと期待している。いずれ出版分野での外資規制が一段と緩められたときのために、下準備は続ける。

――価格の設定が難しい

 中国人は本の値段にシビアだ。一定の金額を超えると、途端に売れなくなる。漫画では7元、女性誌も17、8元が限度と聞いている。質が高 くても、値が張ると売れない。児童書を手がけたいと考えているが、質を高めて価格が上がると、売りにくくなってしまう。悩ましいところだ。

――コピー商品の被害が続いている

 コピー版は無数にある。需要が高い本ほど、コピー版が出がちだ。「本物の販売部数が5万部を超えると、コピー版が出回り始める」という説もある。中国では知的財産権を保護する意識が全般にまだ希薄だと感じる。

 中国語版を手がけたいという取引先を選ぶに当たっては、仲介業者を挟まないで、ダイレクトにやりとりして決める。相手をじっくり確かめてから手を握る。きちんとした付き合いのある出版社であれば、コピー版が野放図に市場に流れるという心配はそれほど大きくない。

 コピー版を見付けたら、その都度、抗議している。ただ、性急に法的手段に訴えようとはしていない。コピー版の製作元が売りたがっている作 品を把握した上で、正式な版権契約を結ぶのが理想だ。正規本のシェアを高めることによって、コピー版の割合を下げつつ、市場を拡大していけるはずだ。

(聞き手は村尾龍雄・弁護士法人キャスト糸賀代表)



<記者の目>

 身長2メートルを超す巨漢がダンクシュートをたたき込む。中国人として初めて米プロバスケットボール、NBA入りを果たした姚明(ヤオ・ミン)のサクセスストーリーを描く伝記漫画の1コマはこんな感じだろう。阿久津氏が構想を練る「中国のヒーロー漫画」のイメージだ。

 中国人漫画家がペンを振るう、中国人を主人公にした漫画を作らないと、中国人読者の共感 は得られない。阿久津氏はこう説く。日本人が出版するからこそ、中国の文化や価値観を重んじようとする気遣いがのぞく。日本のヒット作を持ち込んでお手軽 に稼ごうという発想とは別物の、漫画への愛着が感じられる。漫画誌「週刊少年マガジン」の編集部に19年間も籍を置いた阿久津氏らしい。

 講談社は少年漫画誌の雄、「マガジン」で「巨人の星」や「あしたのジョー」などの傑作 を世に送り出してきた。中国版「マガジン」が立ち上がるには、星飛雄馬や矢吹丈を超える、現代中国っ子の心に響くキャラクターが求められる。漫画を知り尽 くした阿久津氏が投じる大リーグボールのあしたはどっちだ。

(ニュース編成部 小林由佳)


http://www.nikkei.co.jp/china/interview/20051101cd8b1000_01.html
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