――「セブンイレブン」が2004年4月、北京に1号店を出した

 ローソンは今、北京に出て行く予定はない。まず上海でドミナント(=地域集中型の出店戦略による、優越的な立場)を形成する。上海を押さえて、(隣接する)江蘇(こうそ)省、浙江(せっこう)省に出て行く。

 上海、江蘇省、浙江省を含むいわゆる「長江デルタ経済圏」を押さえるのが先決だ。経営資源を集中投下していく。ファミリーマートは広州に出ると聞いているが、ローソンは今すぐにはよその地域に出て行くつもりはない。ドミナントを形成した後に、次のエリアに出て行く。

 他のコンビニがその地域に先に進出している場合、こちらが後発となるデメリットはあるが、むしろ今、あわてて進出した場合、力の分散を招くというデメリットの方が大きい。上海でドミナントを形成してから進出しても、決して遅いとは思わない。

――上海には中国系のコンビニも多い

 上海のコンビニは外資系を含めて4000店にのぼる。ただ、「まだ4000店」とも言える。GDPの成長率や1人当たり所得を考えると、まだ出店余地はある。上海にあるコンビニ4000店のうち、ローソンはまだ5%程度にすぎない。

 これからは「勝ち組」と「負け組」がはっきりしてくる。市場からレッドカードを突き付けられて退場を余儀なくされるコンビニが増えるだろう。中国系のコンビニでは既に新規出店を停止するところも出ている。

 店のクオリティーという点では優劣がはっきりしてきつつある。本当の意味で「コンビニ」と呼べる店は上海に1000店あるかないかだろう。

――国営企業系の地元コンビニとは似て非なる業態だ

 上海のローソンの場合、1日の1店舗当たり販売額は約7000元(=約9万1000円)と、国営企業系の地元コンビニの約2.5倍で、そ の差は歴然だ。年齢層は15―35歳がメーン。国営企業系の地元コンビニでは年配客が主だ。ローソンの客層の男女比は男性35%、女性65%で、女性の支 持を得ている。

 上海のコンビニは2種類に分かれている。ミニスーパー的な品ぞろえで価格訴求を売り物にするタイプと、ローソンのように日本の業態を持 ち込むタイプだ。両者は異質な競争をしている。収納代行業務に代表される各種サービスに利便性を感じてくれれば、我々のパイが広がるはずだ。

――2001年以降、出店ペースが一気に上がった

 私が2001年に着任するまでは、日本人が現地法人の主なポストを独占していた。日本人が13人もいたのを、わずか3人に減らした。その代わりに現地の人を積極的に大事なポジションに起用した。

 言葉も変えた。日本語が社内の「公用語」だったが、中国語をメーンに改めた。今ではどの会議も中国語。ローカライズ(=現地化)には様々な面があるが、最も大事なのは、「人の現地化」だ。

 中国では「ご苦労さん」という言葉だけでは、人は動かない。お金を渡すのが一番だ。インセンティブが必要だ。

――上海ではあちこちでローソンの店舗が目に付く

 2004年度末で210店舗になる見込みだ。2004年度の売上高は3億5000万元(=約45億5000万円、1元=13円で換算)にのぼる。

 日本では約3000人に1店の割合で出店している計算だが、上海では既に3500人に1店という水準に達している。日本にほぼ匹敵する普及度だ。

飲料やレトルト食品がならぶローソン店内(中国・上海)

――上海での主力商品は

 弁当やおにぎりなどの米飯類、パン、飲料、たばこが大きな柱だ。基本的には日本と変わらない。中国にはヘビースモーカーが多いので、たばこの売り上げが大きい。

 「30分以内に食べられる食品」が求められているのも、日本と同じだ。コンビニを冷蔵庫代わりに使う消費スタイルは上海でも定着しつつある。

――中国進出した日本のコンビニエンスストアの草分けだ

 1996年に上海に進出した。中国では最初に苦労した者を「井戸を掘った」として大事にする考え方がある。上海市側からは実質的にはフランチャイズ制に近い「合作」という形態を特別に認めてもらえた。

 世界貿易機関(WTO)加盟に伴う対外開放策の一環として、フランチャイズ制が2004年12月、外資にも解禁されたが、ローソンは進出当時からフランチャイズ制に近いスタイルを実現していた。今回の解禁によって、実質的に競合他社と横並びのような状況になる。

――フランチャイズチェーン(FC)解禁の影響は

 今回の解禁によって、ローソンにもメリットがある。これまでは「合作」という優遇策の枠組みを大事にして、個別の店舗経営者との法的闘争を避けてきた。トラブルを起こさなければ、実質的なフランチャイズ制を黙認するという「合作」のルールを尊重してきたためだ。

 しかし、これからはローソン側として主張すべき点は主張していく。例えば、経営ルールの徹底だ。その日の売り上げをその日のうちにきちん と入金するとか、ローソンの許可なく勝手なルートで仕入れをしないなど、フランチャイズ制の仕組みを維持していく上で不可欠な契約条項については指導を強 める。こうした約束事を守らない場合には、契約解除も辞さない。

 今までは個別の店舗経営者との対応ではあいまいな部分があった。今回の解禁を受けて、筋道を立てて店舗経営者に対応していけるようになった。その意味ではローソンにとってもフランチャイズ展開がしやすくなったといえる。

――フランチャイズ出店の手法も広がる

 新規の出店契約を結ぶ際の契約バリエーションが増える。自己資金がある人や手持ち物件がある人だけではなく、仮に自己資金が不足していて も新規出店できるような契約パターンを用意していきたい。2010年には上海市内で1000店、周辺地域を含めて2000店に拡大する計画だ。

――中国の商習慣は時としてコンビニ展開の壁となる

 一般的に言って、中国ではノウハウの対価として金を払う習慣がない。コンビニ経営のノウハウを経営資源とする当社にとっては、その考え方自体がネックになる。

 決まった時間にきちんと店に商品が届く「定時店着」というスタイルも中国では実現に苦労する。欠品率を下げるには、絶対に必要な条件だが、引き続き努力が必要だ。

 利用者の生活習慣の違いもコンビニの経営に影響する。例えば、日本では通勤・通学の途中でコンビニに立ち寄り、弁当や飲み物を買い求める お客様が多い。自転車を使う人もコンビニに寄る。しかし、中国では自転車に乗って通勤・通学する人はほとんど途中で自転車を降りない。寄り道しないので、 コンビニにも寄らない。

――地元系コンビニに比べて、ローソンはサービスが豊富だ

 日本同様、収納代行業務はお客様から評価されている。銀行の窓口に並んで半日つぶすのを避けたい人は多い。地元系コンビニの中には、物販だけを主に手がけていて、収納代行業務を提供していない店も多い。

 地元の生活者の視点で、生活を便利にするサービスはどんどん採り入れていきたい。文字通りの意味での「コンビニ」というコンセプトを押し 出していく。映画館のチケット販売サービスはきっと喜ばれるだろう。日本で培ったノウハウを生かして、「ローソンらしい」と言われるようなサービスを広げ ていきたい。

(聞き手は村尾龍雄・弁護士法人キャスト糸賀代表)



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