池田高士執行役員
  昨年9月に北京市内の百貨店で、日本産の米の販売が始まり話題になった。その事業を農林水産省から請け負っているのが大手商社の双日だ。また、双日は北京 周辺での食品流通事業も同10月に開始した。急激に成長する「世界の胃袋」をどのように攻略するのか。食料本部長の池田高士執行役員に聞いた。

――農林水産省の事業を請け負って、中国北京の百貨店で日本の農産品を販売している。

 農水省は農村活性化策として現在約4000億円の日本の農林水産物の輸出を2013年までに1兆円に拡大しようという構想がある。その一環として、今回北京で販売活動をしているが、ロシアなどの他の国でも同様の取り組みはしている。

農水省の委託を受けて北京の百貨店で日本食を販売・アピールしている
 店舗の開設は07年9月末から今年の3月末までで、北京の三越系の高級百貨店に30平方メートルのスペースを確保している。食品点数としては180品目ほどだ。

 中国での注目度は、メディアを含めて高い。日本の米は、現地の米に比べて10倍ぐらい高いが、それでも飛ぶように売れた。今は完売してしまっている。

 ただし、通常は商品を陳列するだけでは売れるものではない。昨年12月は「北海道祭り」と称して、カニやシャケなどの水産加工品をアピールした。その都度キャンペーンをしたり、DVDで日本の食品や食文化を紹介したりしている。

――食品関連における中国市場をどのように見ているのか。

 かつて中国は加工基地としての位置付けが強かった。日本は食料自給率が40%を切ったが、それを補完する中国が供給元として重要な位置を占めるようになった。

 中国の食料品は昨年、安全性が問題になったが、日本に持ってくるものは日本の基準できちんと加工や検査をしており問題はない。加工基地としての位置付けは今後も変わらないだろう。中国の食品工場は圧倒的に規模も大きく、コスト面で日本とは比較にならない。

 ここにきて沿岸部や北京などの大都市で所得水準が上昇しており、市場として見るようになった。13億人のうち中産階級以上は3割の4億人になると言われている。非常に大きなマーケットだ。日本食もブームになっている。

――双日としては具体的にどのような事業を手がけているのか。

北京のスーパーに陳列された三元集団の商品
  昨年10月に現地企業の北京三元集団との合弁会社、北京三元双日食品物流が事業を開始した。三元集団が51%、双日が49%を出資する。投資額は10億円 になる。三元集団は脱脂粉乳やヨーグルト、アイスクリームなどの製造する食品メーカーで、その物流会社に我々が出資した格好だ。

 冷凍、冷蔵、常温の3つの温度帯を保って配送できる3温物流事業を手がける。三元集団はすでに北京に3つの物流センターを持っているが、あまり効率が良くない。今回新たに4000平方メートルの大型センターを作って稼働させている。

北京三元双日食品物流のトラック
 新しいセンターの能力の90%以上はすでに埋まっている。さらに北京五輪までに隣接地域に1万平方メートルのセンターを開設する予定で、その後古い3つのセンターを閉鎖して機能を集約する。日本流のシステムも導入して効率化する。

 乳製品だけではトラックがガラガラになってしまうので、卸機能を強化して、様々な食品を一緒に配送できるようにする。独自の商品も企画していく。

 日系の食品メーカーの進出も支援して、物流網を提供したり、代金回収などもやる。すでに各企業からの引き合いで、新しく設置する。2015年までに物流事業だけで年間40億円の売上高を目指す。

――競合他社と比べた強みはどこにあるのか。

大連のマグロ加工場
  北京の周辺地域で、3温物流を手がけられるのは我々ぐらいだろう。そうした温度管理機能を持ったトラックを持っていない。現地企業はひどい場合には、アイ スクリームを常温で運んでまた凍らせるというようなことをしている。北京の周辺でまず拡大していき、天津などの都市にも広げていく。物流センターは第2、 第3も作っていく。

 大連にはマグロの超低温加工場を持っており、年間2000トンを扱っている。うち1000トンは中国市場向けで、そうした水産物の流通も手がける。

 上海地域はすでに競合が多く、同じような事業の進出は厳しい。北京とは違う形で、食品事業を展開しようと思う。

――中国の食の変化をどのように見るか。

 中国には30年前からちょくちょく足を運んでいる。その昔は配給制だったり、いわゆる「パパママストア」である小規模店舗、露店などが食品販売の中心だった。それが今では、北京、上海、広州などの大都市では日本と変わらずスーパーやコンビニが主流になった。

 外食産業も発展している。日本食レストランも材料の生鮮度が良くなった。現地にいる日本人だけでなく中国の家族が利用したり、若いオフィスワーカーも食べている。健康志向は非常に強く、ヘルシーだと言われる日本食を好む人もいる。日本食は市民権を得たと思う。

 ただし、通常の10倍の値段もするような食品は、もの珍しさやブームで買っている部分がある。贈答用も多い。日本食が根ざしたかというとまだだろう。

 やはり、単に日本の食品を持っていけばいいという話ではない。日本食の料理教室を開いたり、広告宣伝もやる必要がある。

――「段ボール肉まん」騒動などもあった。安心安全への関心は。

 段ボール肉まんは捏造であったし、安全安心の状況はそれほどひどいわけではない。しかし、中国国内向けの食品は日本の基準と比べると完全ではないところもある。

 安全安心はすなわち美味しいにつながる。生活水準も上がっていて、安全安心を求める人も増えるだろう。


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