――プラズマテレビの販売に力を入れる

 2006年度に中国での売上高1兆円を目指し、白物家電やAV(音響・映像)機器の最先端の商品を投入している。中でも最大の戦略商品がプラズマテレビだ。シェアは今のところ17%程度だが、2006年度には30%以上を目指す。

 中国メーカーの安値攻勢を受けて苦戦しているものの、圧倒的に高い品質で勝負できるはずだ。現場では50%を取りに行けとハッパをかけている。「1兆円」達成のためにはそれほどの覚悟が必要だ。

 上海の工場でプラズマテレビを一貫生産している。中国では薄型テレビの85%がプラズマで、売れ筋は42インチと大型のものだ。ハイビジョン対応の商品も売り出しており、今後主力になるだろう。とりわけ高機能製品では、中国や韓国メーカーに負けないと確信している。

――経営の現地化を加速する

 中国の事業会社61社のうち、役員に占める中国人の割合は3割程度。中国人がトップを務める会社はまだ2社にとどまっている。早く経営トップの多くを中国人にし、経営の現地化を進めたい。

 経営の上層部を中国人に任せられるかどうかは、もはや思い切りの問題だ。現地の人材は既に育っている。しかるべきポジションに就くべき だ。日本人は中国人幹部を支える「黒子」のような存在として仕事をすればよい。北京大学にMBA(経営学修士)講座を開いて幹部候補生に研修を受けさせる など、人材教育面でもサポートしている。

地域統括会社「パナソニック・チャイナ」
――販売の最前線を重視する

 家電量販店の店頭には当社から販売員を派遣して、販売の最前線で情報を集めている。今年に入って、日々の店頭の売れ筋情報や在庫状況を把握できるサプライチェーンマネジメント(SCM)の手法を導入した。データに基づいた迅速な経営判断ができるようになっている。

 販売店への対応は各支店ごとに受け持っていたが、家電量販店がここまで販売ルートとして台頭してくると、当社の窓口も統一する必要が出てきた。営業部門の組織を変更して、量販店と一般店舗に分けて対応している。

 一方、一般の中小販売店にはこれまで代理店経由で対応してきたが、商品のコンセプトや魅力を消費者に伝えるという点でどうしても力不足 だ。これからは量販店同様、店頭に販売員を派遣して直接顧客対応ができる体制に変えていく。一般店舗は数が多いので時間はかかるが、整備していきたい。

――広い中国では物流網の効率化が欠かせない

 これまでの物流網は工場単位でバラバラに組まれていて、効率が悪かった。統括会社と物流関連の子会社が中心となって、工場や事業所の単位を超えた仕組みを構築している最中だ。

 4月から一部の事業所でリードタイム短縮のためのSCMの仕組みを取り入れ始めた。物流網の整備はその実現に欠かせない。来年4月には全事業所でSCMを採用する予定で、新たな物流網も合わせて完成させたい。

――内陸部への対応は

 沿海部と比較すると数は少ないが、プラズマテレビなどの高額商品も実は売れている。重慶や武漢にも支店があり、今後もこういった地域への販売に一層力を入れていく。

――中国でも松下電工との協業を進める

 両社の協業で生まれるシナジー(相乗効果)は大きい。4月から家電製品の販売を一本化しており、販売網や管理機能の効率化といった成果が 出始めている。中国でも日本同様、4月からすべての分野で協業を始めたかったが、中国では住宅、建材関係の販売ルートが複雑で、一本化が遅れている。

 1年程度で具体化できると考えている。両社の得意分野を合わせて家やマンション、ビルの設備や家電を一括して請け負うスタイルの商品を、中国でも手がけていきたい。

中国で販売する冷蔵庫
――中国を世界の開発拠点に育てる

 大連のソフトウエア開発拠点では、世界に通じる製品の開発を視野に入れている。日本の開発機能の一部を大連で受け持つことになる。

 2006年度は中国の理系技術者を600人採用する。北京、上海、大連、広州など各都市に採用センターを設置してリクルート活動を進めている。彼らは非常に優秀だ。

 一方で中国仕様の家電の開発も現地で進めている。4月には上海に「中国生活研究センター」を開設し、中国の生活や文化に合った製品を研究している。杭州には白物家電の開発センターを置いた。家電はその国の生活習慣に根ざしたものでないと絶対に売れない。

――新製品の世界同時立ち上げにこだわる

 日米欧で発売する新製品を中国でも時差なく投入することを目指している。中国の消費者は、新製品が世界のどこでいつ発売になるか、インターネットなどを通じてよく知っている。中国だけ何カ月も遅れて発売するといったことはもはや許されない。

――中国の家電大手TCLと協業している

 普及価格帯のブラウン管テレビをTCLに生産委託する一方、当社の携帯電話やカーオーディオの部品を使ってもらっている。お互いの得意分野を生かした提携関係ができつつある。条件が合えば他社との協業もありうるが、今のところTCL以外に具体的な計画はない。

――パソコンの製造は中国に移管しないのか

 当社のノートパソコン「レッツノート」の製造技術は洗練されたノウハウの塊であり、日本で作るのに適している。神戸の工場で生産しており、今後もあえて中国に持っていく必要はないと考えている。何でも中国というわけではなく、住み分けも必要だ。

――「2006年度に1兆円」達成の見込みは

 中国での売り上げは2004年度に約6700億円。前年比約25%増の勢いで伸びている。2005年度の第1四半期も、いろいろな逆風に もかかわらず、予定通りに推移している。今は「見込み」を語っている場合ではない。これは何があっても達成しなければならない必達目標だ。

(聞き手は村尾龍雄・弁護士法人キャスト糸賀代表)


http://www.nikkei.co.jp/china/interview/20050802cd882000_02.html

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