池田高士執行役員 |
――農林水産省の事業を請け負って、中国北京の百貨店で日本の農産品を販売している。
農水省は農村活性化策として現在約4000億円の日本の農林水産物の輸出を2013年までに1兆円に拡大しようという構想がある。その一環として、今回北京で販売活動をしているが、ロシアなどの他の国でも同様の取り組みはしている。
農水省の委託を受けて北京の百貨店で日本食を販売・アピールしている |
中国での注目度は、メディアを含めて高い。日本の米は、現地の米に比べて10倍ぐらい高いが、それでも飛ぶように売れた。今は完売してしまっている。
ただし、通常は商品を陳列するだけでは売れるものではない。昨年12月は「北海道祭り」と称して、カニやシャケなどの水産加工品をアピールした。その都度キャンペーンをしたり、DVDで日本の食品や食文化を紹介したりしている。
――食品関連における中国市場をどのように見ているのか。
かつて中国は加工基地としての位置付けが強かった。日本は食料自給率が40%を切ったが、それを補完する中国が供給元として重要な位置を占めるようになった。
中国の食料品は昨年、安全性が問題になったが、日本に持ってくるものは日本の基準できちんと加工や検査をしており問題はない。加工基地としての位置付けは今後も変わらないだろう。中国の食品工場は圧倒的に規模も大きく、コスト面で日本とは比較にならない。
ここにきて沿岸部や北京などの大都市で所得水準が上昇しており、市場として見るようになった。13億人のうち中産階級以上は3割の4億人になると言われている。非常に大きなマーケットだ。日本食もブームになっている。
――双日としては具体的にどのような事業を手がけているのか。
北京のスーパーに陳列された三元集団の商品 |
冷凍、冷蔵、常温の3つの温度帯を保って配送できる3温物流事業を手がける。三元集団はすでに北京に3つの物流センターを持っているが、あまり効率が良くない。今回新たに4000平方メートルの大型センターを作って稼働させている。
北京三元双日食品物流のトラック |
乳製品だけではトラックがガラガラになってしまうので、卸機能を強化して、様々な食品を一緒に配送できるようにする。独自の商品も企画していく。
日系の食品メーカーの進出も支援して、物流網を提供したり、代金回収などもやる。すでに各企業からの引き合いで、新しく設置する。2015年までに物流事業だけで年間40億円の売上高を目指す。
――競合他社と比べた強みはどこにあるのか。
大連のマグロ加工場 |
大連にはマグロの超低温加工場を持っており、年間2000トンを扱っている。うち1000トンは中国市場向けで、そうした水産物の流通も手がける。
上海地域はすでに競合が多く、同じような事業の進出は厳しい。北京とは違う形で、食品事業を展開しようと思う。
――中国の食の変化をどのように見るか。
中国には30年前からちょくちょく足を運んでいる。その昔は配給制だったり、いわゆる「パパママストア」である小規模店舗、露店などが食品販売の中心だった。それが今では、北京、上海、広州などの大都市では日本と変わらずスーパーやコンビニが主流になった。
外食産業も発展している。日本食レストランも材料の生鮮度が良くなった。現地にいる日本人だけでなく中国の家族が利用したり、若いオフィスワーカーも食べている。健康志向は非常に強く、ヘルシーだと言われる日本食を好む人もいる。日本食は市民権を得たと思う。
ただし、通常の10倍の値段もするような食品は、もの珍しさやブームで買っている部分がある。贈答用も多い。日本食が根ざしたかというとまだだろう。
やはり、単に日本の食品を持っていけばいいという話ではない。日本食の料理教室を開いたり、広告宣伝もやる必要がある。
――「段ボール肉まん」騒動などもあった。安心安全への関心は。
段ボール肉まんは捏造であったし、安全安心の状況はそれほどひどいわけではない。しかし、中国国内向けの食品は日本の基準と比べると完全ではないところもある。
安全安心はすなわち美味しいにつながる。生活水準も上がっていて、安全安心を求める人も増えるだろう。
>> 池田高士さん略歴
http://www.nikkei.co.jp/china/interview/20080107cdb17000_07.html
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