――中国で展開する「オプレ」は国民的ブランドになっている

 オプレは中国市場向けのブランドとして販売開始から10年になる、当社商品の中で中国で最も売り上げの大きいブランドだ。認知度も高く、 中国人に愛されるブランドに育ったと思っている。アテネ五輪でも中国選手団の公式化粧品として採用された。もはや中国人からは中国のブランドだと思われて さえいるのではないか。

 当初から「あこがれのブランド」を作りたいという思いがあり、価格は「無理すれば手が届く」あたりに設定して、品質の高い商品作りにこだわった。あこがれの化粧品というイメージと高い品質がうまくマッチして市場に評価されたのだと思う。

――早い段階から中国市場向けのオリジナル製品を展開した

 化粧品は地域や環境で大きく変わる製品だ。オプレ発売にあたっては中国の女性の肌を研究した。日本の温暖な気候と比べて中国の自然環境は 厳しく、乾燥も激しい。水も日本は軟水だが、中国は硬水だ。研究を重ねた結果、中国市場向けのオリジナル商品を開発すべきだと考えた。日本の商品はもとも と価格が高い上に関税などが加わり、経済的な壁があったため、現地生産できる商品にしていこうと判断した。

 中国での展開は、1981年に北京のホテルなどで輸入化粧品を販売したところから始まっている。同年、北京市と技術協力を始め、その2年後には早くも技術協力先の中国の会社からシャンプー、リンス、スキンケアなどの統合ブランドを立ち上げた。

 91年には北京で合弁会社を立ち上げて94年からオプレの生産・販売を始めた。それまでの10年間の北京市との協力で、現地にも人材が 育っていたことなど、中国で培った資産をうまく活用できたため、品質の高い製品の生産が可能だった。合弁会社での生産、販売はほぼ計画通りに進み、早い段 階で利益を出すことができた。

――中国に開設した研究所から日本向けブランド「シノアドア」が生まれた

 4000年の華やかな歴史を持つ中国には、固有の美を作る方法論があるのでは、と考えて、2002年に中国に研究所を立ち上げた。シノアドアはこの研究所と組み、中国の医学の考え方を化粧品に取り入れた商品として、日本市場向けに投入したブランドだ。

 漢方薬の発展は日本と中国で異なる。研究所の立ち上げにあたっては、中国の漢方薬には「まだ何か潜んでいるのではないか」「『漢方美容 法』なるものがあるのではないか」という発想があった。薬草を含め、新しい原料を発掘できないか、日本からの商品を中国でどうアレンジすればよいか、な ど、中国から見た化粧品の新たな展開を模索したいと考えている。今後は中国発のグローバルブランドの登場もありうるのではないか。

――資生堂本社の専務として初めて中国総代表として駐在している

 中国市場の成長は著しく、変化が激しいため、現場で素早い経営判断が必要になってきた。中国で展開するブランドや製品カテゴリーが増えたことから、それらを横断的に見て統括する必要が出てきた。私の役割は資生堂としてのトータルなブランド展開の指揮にあると思っている。

――中国進出のきっかけは

 北京市からの要請があったことに加え、当社でも「中国は将来必ず発展する」と考えていた。早く中国に出て行って女性顧客との接点を持ちたかった。

 確かに中国ではまだアイシャドーなどのメーキャップをそんなに多くの人がしているわけではないが、「美しくなりたい」という願いは、どの 国の女性も同じ。化粧品に対する欲求は日本の消費者に近いと感じている。ファッションにも非常に関心が高く、スキンケアや化粧品購入も所得水準の向上を追 い風に大変、積極的だ。「美白」商品も人気がある。

中国で5000店の展開を目指す資生堂化粧品専門店の看板

――上海工場では中価格帯製品の現地生産も進める

 中国では消費者の購買力が底上げされ、新たに富裕層以外の大きな購買層が出現した。こういったマーケットに対しても参入したいと考え、上海に合弁会社を作り、デパートよりもやや安い価格帯の商品を生産している。

――購買層の拡大に向けた販売網の構築は

 内陸など大都市以外も含めて販路を拡大するため、日本でも展開してきた専門店のノウハウを活かした店舗展開をする。まずは昨年秋に上海に モデルとなる専門店を開設し、今年に入って募集を開始したところだ。2008年に5000店という大きな目標を掲げている。店舗経営者へのアドバイスや (店舗運営の)契約などを1店ずつ手作りで行い、ほぼ計画通りに進展している。

 今後の急拡大への対応が課題だ。人員確保の問題も大きい。日本から派遣するスタッフの数を増やし、現地でも毎日のように採用面接を行っている。専門店網の拡大が現地の持ち株会社の大きな使命だ。

 中国にはデパートがない100万人規模の都市も多数存在するため、オプレについても、別途専門店を200店程度展開していく予定だ。

――ブランドづくりのための広告宣伝活動の展開は

 当初から広告宣伝はあまりやっていない。デパートでの対面販売が中心なので、マス広告には意味がない。「カウンターでのコミュニケーショ ン」を最も重視している。デパートなどでコーナーを設置してカウンセリングをしっかり行い、サンプルと処方せんを差し上げて「また来てください」と。これ だけをずっと繰り返して信頼を構築し、消費者の輪が広がってきた。

――販売員の教育がカギとなる

 これが最大のポイントだった。販売員の商品知識や技術をどうやって上げるか。いかに気持ちよくサービスできるか。ビジネスの基本的な部分 だが、教育には相当力を入れている。日本からもトレーナーが出向いて指導しているし、現地のトレーナーを日本で教育して現地の指導員に育てている。当初は お客様に「にっこり」することに抵抗を覚える店員もいたようだが、教育を徹底してきた。

 現在、店舗の拡大でトレーナーの数が不足している。日本からの応援が続くが、現地でトレーナー候補の採用も行っている。日本の最前線の販売員が現地へ出向いて、通訳をつけてOJTで指導することもある。

 クレーム対応など、現場での顧客の声を吸い上げる仕組みもまだ手薄で、日本から専門家を呼んでシステム化する計画だ。

 現地では女性従業員の登用が進んでいる。既に教育やマーケティングなど部長クラスはほとんど女性だ。

――模倣品への対策は

 ブランドや流通店舗、そしてなにより顧客を守る上で大変重要な課題だ。具体的な対策の内容をお話することはできないが、しっかり対策をしていきたいと考えている。最近は中国政府などでも熱心に取り組んでいるので協力しながら進めていきたい。

 (聞き手は村尾龍雄・弁護士法人キャスト代表)http://www.nikkei.co.jp/china/interview/20041008cd7a8001_08.html

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