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百度株式会社・陳海騰代表取締役

 検索サービス市場で強力な競争力を持つグーグルだが、実はアジアではかなり苦戦している。日本と中国、韓国という巨大なマーケットで、過半数のシェアを握れずにいるのだ。このうち中国で圧倒的なシェアを獲得しているのが「百度(バイドゥ)」である。

 百度(Baidu.com)は、現CEOのロビン・リーが2000年1月に設立した検索サービスサイトで、中国市場では現在、70%を超 えるシェアを獲得している(中国アイリサーチ調べ)。また世界市場でも、グーグルとヤフーに続く第3位につけている(米国コムスコア調べ)。

 この百度が、1月23日に日本でのサービス(Baidu.jp)を公式に開始した。中国本土とのサービスの違い、日本を進出先として選んだ理由、今後の事業展開などを、中国百度の日本法人「百度株式会社」の陳海騰代表取締役と舛田淳取締役に聞いた。

――中国で圧倒的なシェアを獲得した理由をどう分析しているか。

百度株式会社・舛田淳取締役

 よく知られていることだが、グーグルは同じサービスを多数の地域で展開する。グローバル展開の1つのスタイルであり、これはこれで正しい と思う。しかし、グーグルのサービス内容は欧米圏や英語圏のユーザーを重視している印象があり、アジア圏では今ひとつ支持を得にくいようだ。

 中国では百度、韓国ではNAVER、そして日本ではヤフーの検索シェアが高い。いずれも「インターネット大国」と呼べる巨大なユーザーを抱えた市場であるにも関わらず、グーグルは欧米と同レベルのシェアを獲得できないでいる。

 日本の話で言えば、ヤフージャパンは米国ヤフーのサービスをそのまま持ってくるのではなく、日本向けに徹底的にローカライズし、使い勝手 を高め、日本ユーザーに親和性の高いポータルサイトと検索サービスを作り上げたことが影響していると思う。オークションサービス、ヤフートピックスなど、 人気が集まっているサービスも米国とは異なる。

 百度もまた、「中国ユーザーのニーズ」を徹底的に拾い上げることで「中国ならではの検索サービス」を作り上げた。ここに成功のカギがあると考えている。よって、日本でも同じように「地域性」を重要視したサービス展開を行う予定だ。

――中国と日本では展開するサービス内容が異なるということか。

Baidu.jp。検索機能を中心としたシンプルな画面構成で、いま話題となっていること、良く検索されている言葉などがすぐにわかるように工夫されている

 ロビン・リーは、「私は中国市場のことはよくわかるが、日本市場のことはまだよくわからない部分も多い。だから、日本のスタッフが考えて決めたことの方がよい物になるはずだ」と語っている。

 我々も「中国の百度にあるサービスのどれをローカライズするか」ではなく、「日本のユーザーに適したサービスはどのようなものか」という視点で考えている。最終的には「中国の百度」と「日本の百度」が、違う物になる可能性も高いということだ。

 また、ことさら目新しいサービスを提供することが正しいことだとも考えていない。検索エンジンサービスで重要なのは「知りたいことを素早 く適切に検索できること」だ。検索エンジンサービスの基本機能をきちんと評価してもらうことが、日本市場で受け入れられるための第一の条件だと考えてい る。

 まずはユーザーに、百度の優れた検索技術とサービス内容をきちんと評価してもらいたい。そうしてじっくりとユーザー動向を踏まえたうえで、日本市場に合致した付加サービスとは何か、ということを考えていきたい。

――日本を最初の海外進出先として選んだ理由は?

Baidu.jpの動画検索機能

 同じ漢字文化圏ということもあるが、マーケットの大きさとアジア市場全体の未来を見越してのことだと考えて欲しい。

 日本はITインフラの整備が進んでおり、利用しているユーザーのリテラシーも高い。中国では約2億人のインターネットユーザーが存在する が、かれらはほぼ富裕層で、やはりITリテラシーが高く、マーケットシェアも大きい。その彼らを相手にビジネスを展開してきた経験は、日本でも有効だろう と考えている。

 また、日本と中国という巨大な市場を有機的に結びつけることができれば、欧米主体で展開してきたインターネットテクノロジーやビジネスの流れが、大きく変わるきっかけにもなるかもしれない。

 もちろん「地理的に近いから我々が行き来しやすい」こともメリットの1つだ(笑)。

――正式サービス開始後、日本ユーザーの反応はどうだったか。

Baidu.comでMP3検索をかけた画面

 賛否両論、予想よりも大きな反響をいただいた。

 「賛」については、検索エンジンの選択肢が1つ増えるということを好意的に受け止めていただいたユーザーが多かったようだ。マスコミに取り上げられる機会も多く、その分だけ注目度が高まり、サービス開始時点のアクセス件数は予想を大きく上回るものになった。

 「否」については、「日本の法意識や習慣から考えると違和感がある」という反応がいくつか寄せられている。

 たとえばトップページの「話題の動画」や動画検索機能では、一部著作権に問題のあるコンテンツが検索結果として表示されることがある。た だし百度は「入り口」であり「ナビゲーター」であって、実際のファイルをアップロードしているわけではない。違法性があるとは認識していない。もちろん 「地域性を重視する」という原則をふまえ、日本の法的コンセンサスは十分に重視していくつもりだ。

 残念なのは、「中国のIT企業である」ということに対する反発が若干あったこと。百度は中国政府からの資金提供は受けていないし、中国の国策を反映してなにか動くようなこともないのだが。

――検索サービス以外の事業を展開する予定はあるのか。

 記者発表会場や広告代理店との折衝では「中国の百度に広告出稿はできないか」という相談を受けた。このため、Baidu.jp事業とは別に、中国の百度に広告出稿する際の窓口となる「国際事業室」を日本法人に設置し、事業を準備している。

 中国の富裕層の間では、旅行やそれに付随する買い物がブームになっている。百度の検索でも「温泉」や日本の地名を入れた検索が目立つよう になっており、地理的に近い日本へ旅行に出かける人は増えてきた。中国のインターネットユーザーは、まさにこうした「旅行や買い物に興味のある富裕層」と 合致しており、中国市場に大きなリーチを持っている百度に日本企業が注目するのは当然だろう。

 また、中国に進出したい日本企業であれば、我々が蓄積しているデータを活用することで、中国市場のニーズをくみ上げることができる。検索データを元にしたさまざまな業界レポートを作成しており、そうした相談にも乗れるようにする予定だ。

 日本でのメイン事業となるBaidu.jpのビジネスモデルについては、中国と同じ広告ベースを考えている。しかし、2010年まではこ れを積極的に展開する予定はない。というのも、検索サービスにおける広告ベースのビジネスモデルは、大きなトラフィックと、それをきちんと処理できる体制 が整って初めて機能する。日本の百度は、まだその段階ではない。

――ギョーザ問題をきっかけに、中国に対する不安感が再び高まりつつあるが。

 これも残念なことだ。我々に対しても影響がないとは言えないと思う。ただ、中国というマーケットを脅威として考えるか、友好的にとらえるか、どちらが正しいかと言えばやはり後者だろう。

 今後、中国が世界経済の中心になる、あるいは中心に近づいていくことはあっても、そこから遠ざかるということはおそらくない。富裕層の購買力も大きいし、生産工場としても非常に大きな役割を果たしているからだ。

 チャイナリスクを過度に意識して距離を置くことは、ビジネスチャンスを逃がす結果につながると思う。もちろんこれは、百度と関係する企業に限ったことではない。日中が協力して同じルールの下でビジネスを展開すれば、両国の企業は等しくメリットを享受できるはずだ。

(聞き手はNIKKEI NET 竹内 亮介)
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